大好きなお父様へ伝えず逝ったK様の思い

支援員Oです。
入院先の急性期病院からのご紹介があり、40歳代半ばで入会された会員K様のお話です。お会いした時は、既に子宮癌が進行し、他の箇所にも転移していました。医師からは、敗血症で万が一の可能性もあると説明を受け、自宅療養ではなく施設へ入居することになり、当会が身元保証人をお引き受けいたしました。K様は、ゆっくりお話しをされる方で、とても明るくチャーミングな方でした。病気については、しっかりと理解され、分からないことは熱心に看護師へ聞いてメモを取っていらっしゃいました。癌と闘う強い意思をお持ちで、食事にも気を使い、自然食品を積極的に召し上がっていましたし、K様の希望により、施設内で月に一度輸血もされていました。
一つ気になったことは、K様は東北地方で暮らすお父様へ今の状況をお伝えしていない事でした。そのことについてお聞きすると、「父は、とても気が小さくて、私の状況を受け止められず凄く落ち込んでしまうから、絶対に話さないで欲しい!」と強く言われ、ご意思を尊重することにしました。K様はお父様への遺言書を作成し、協働する弁護士法人名城法律事務所へ預けられました。その一方で、お父様へよく電話し、「元気でいるよ」とお話しをされていました。
医師から余命宣告をされた日より半年以上が過ぎたころ、施設でお亡くなりになりました。私は最期、手を握りながら寄り添うことが出来ました。
K様のご希望通り、お父様へは電話でお知らせしました。お父様は信じられない様子で、「娘とは先日も電話で話をした。暑いからとエアコンを購入し、取り付けまでしてくれた。」と話されましたが、気が動転し慌ただしく翌朝、東北から新幹線で上京されました。
私は、お父様とお会いし、きずなの会に入会された経緯から、お父様へ病気のことお伝えしなかったことも全てをご説明しました。お父様の滞在期間に合わせ、葬儀の日程を調整しました。当日、お父様の妹様とその娘様も参列され、K様の生い立ちなど伺いました。
無事に葬儀を終えた後、お父様のご希望でK様が暮らしていた施設のお部屋へ立ち寄りました。少しの時間、椅子に腰かけ、亡き娘様へ思いを馳せていらっしゃいました。
施設長より、「K様は最後まで癌と闘っていらっしゃいました。とてもお強い方でしたが、私たち職員にはとても優しく接してくださいました。」と話を聞き、お父様は静かに頭を下げていらっしゃいました。K様のご遺骨を抱きながら、「きずなの会にはとてもお世話になりました。ありがとうございました。」とお礼のお言葉をいただきました。
K様は大好きなお父様と一緒に、東北の自宅へと帰っていかれました。
心よりご冥福をお祈りします。

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